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次世代サービス最前線ブログ 小池良次のシリコンバレー情報通信

ICTフロント・シーンで展開される多様なサービスやテクノロジーを
小池良次がシリコンバレーから探訪していきます。

 

Salesforce.com社がソーシャル・コンピューティングに参入

2009年11月20日

Salesforce.com社のプライベート展示会「Dreamforce 2009」がサンフランシスコで開催された。世界60カ国から1万9,000名を超える参加者が集まったほか、GoogleやTwitter、FaceBook、eBayなどシリコンバレーを代表するネット企業がずらりと顔をそろえて、この不況のさなかとは思えない盛況ぶりだ。


──今年は意外な分野へとサービスを多角化

Dreamforceの楽しみは、毎年変わる企業キャッチフレーズと、それにあわせて発表される新製品にある。

SaaS(Software as a Service)技術をベースに中小企業向けCRM(顧客管理ソフト)をいち早く開拓した同社は一昨年のDreamforceで、PaaS(Platform as a Service)ベンダーを標榜して、“Force.com”というアプリケーション・プラットフォームを紹介した。

また、昨年はCloudベンダーのキャッチフレーズを全面にだし、Facebook社やAmazon Web Services社との提携を発表したほか、すでに提携していたGoogleとの関係強化を明らかにして“クラウド陣営作り”で話題を集めた。

このように同社は、シリコンバレーで話題となっている新分野や新サービスをいち早く標榜し、製品化する。その意味でドリームフォースは「今年はなにが飛び出してくるやら」と期待させてくれる数少ない展示会だ。

そして今年も「Salesforce Chatter」を引っさげて、ソーシャル・コンピューティングという新分野に参入することを発表した。確かにソーシャル・サービスはクラウド業界でも注目を集めているが、まさかSalesforce.comが参入するとは想像できなかった。


──Salesforce流、ソーシャル・コンピューティング

私はソーシャルを大きく2つのグループに分けている。FaceBookやMySpace、mixiなどで有名なSNS(Social Networking Service)は、好きな人々が集まる共有場(コミュニティー)を提供するスペース系だ。一方、ノン・スペース系と呼べるタイプもある。日本ではまだまだ知名度が低いが、Twitterが代表的なサービスで、同社は急成長を続けている。Twitterは俗に「つぶやきメディア」と呼ばれ、ユーザーは140字以内のメッセージをTwitterに書き込むだけでなく、好きな人物や企業、メディアなどがつぶやくメッセージをフォロー(受信)する。SNSが同好クラブなら、Twitterは瓦版といった趣をもつ。

こうしたソーシャル・ツールは最近、企業アプリケーション分野で大きなブームとなっている。たとえば、企業向けUC(Unified Communication、統合コミュニケーション・ツール)では、IBMのLotus SametimeやMicrosoftのSharepoint&OCS(Office Communication Server)が、FacebookやTwitterとの連係機能で競争している。また、コラボレーション・アプリ分野でもnGenera社などを筆頭に企業向けソーシャル・ツールがブームを呼んでいる。

Salesforce.com社も既にFacebookとの提携をおこなっており、SNS分野には無縁ではない。一方、今回発表した“Chatter”はTwitter機能の取り込みを狙っている。しかも、単なるTwitterとの連係ではなく、企業ツールとしてより深く作り込みがおこなわれている。

Chatter機能は同社のCRMソフトに組み込まれる予定だが、“つぶやき”の目的は社内コミュニケーションの円滑化にある。たとえば、営業担当者が、ある会社から見積もりの依頼をうけたが、知らないサービスが入っていたとする。そこで「こんなサービスを我が社でやっていただろうか」とつぶやく。そうすると、他の社員がそれを見て「だったら、Bさんにコンタクトすると良い」と言ったアドバイスを与えることができる。実際、大手コンピュータ販売のDell社では、Twitterをモニターする社員をおき、社名や製品名が入った“つぶやき”を検索して、カスタマー・サポートをおこなっている。こうした動きは、Twitterマーケティング、Twitterキャンペーンなどと呼ばれ、注目を集めている。

こうした社員間のコミュニケーションだけであれば、Chatterは単なる機能拡張であり、新サービス、新アプリケーションとは言いがたい。しかし、Chatterにおいて“つぶやく”のは人ばかりではない。簡単なロジックを書くことで様々なアプリケーションがつぶやく。たとえば、出荷管理アプリケーションが「x月y日ss時に、A社向けUU製品の出荷を終えました」とつぶやいたり、カレンダー・ソフトが「今日午後3時からの会議は中止となりました」とつぶやいたりする。またコンテンツでは「S社の株式、急落」、「MMに関するパワーポイント資料が更新されました」などといったつぶやきも可能だ。つまり、Chatterでは人だけでなく、アプリケーションやコンテンツが“つぶやき”を通じてリアルタイムで情報を更新してくれる。

◇◇◇

クラウドやウェブ2.0分野においてTwitterは、Googleの検索サービスを超える存在だと私は考えている。

現在のインターネットは、様々な意見や出来事が情報として飛び交うだけでなく、それをアプリケーションが加工して新たな価値を生み出している。そうした時々刻々と生み出される知的活動を把握するツールとして、私たちは検索エンジンを利用してきた。

なるほど、Googleはページリンクという革新的なアイデアで素晴らしい検索エンジンを開発した。また、検索連動広告で商業化にも成功した。ただ、検索はキーワードを打ち込んだ瞬間の状況を切り取る一種のカメラに過ぎない。

一方、チャットや携帯メッセージに源流があるとはいえ、Twitterはビデオ・カメラのように時々刻々と変わる世の中を“つぶやき”を通じてリアルタイムで把握させてくれる。つまり、継続的で同時性をもつ検索サービスといえる。その点で、従来にない新しいアイデア・ツールだ。Googleが検索で克服できなかったリアルタイムの壁をTwitterは克服しようとしている。もちろんGoogleも、Twitterの意義は承知しており、Google Waveというサービスで反撃に入っている。おかげで、久しぶりにGoogleが他社を追う構図が見える。

Salesforce.com社は、こうしたTwitterの価値と仕組みをよく理解している。そして、Twitterを取り込むときに“企業アプリケーション”と“つぶやき”を結びつけた。その点で実によく考えられた企業向けソーシャル・ツールといえるだろう。

今年のDreamforceは、企業クラウド・アプリの新たな方向性を示しているのかもしれない。

 
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