インターネット上の3D空間で開催される会議やセミナーを体験してみたい―。自分の分身(以下:アバター)をバーチャルワールドに解き放ち、 意のままの行動や発言をさせたり、他人と意見を交換したり・・・。果たして、「アバター同士で意思疎通できるのだろうか?」「遠隔地に住む人同士でも臨場感溢れる会議ができるということは、どのような感覚なのだろうか?」と興味津々で参加した3Dバーチャルセミナー(主催:次世代サービス共創フォーラム)が、12月9日の第3回セミナーで無事終了しました。
セミナー参加前までは、「遠隔地同士の会議はビデオや音声が使えれば十分。3D?アバター?必要なし」との確固たる信念がありました。しかし、セミナーの回を重ねるごとに、その信念が微妙に揺らぎ始めたのは事実です。操作性、セミナーや会議の見せ方、利用者のサポート方法など改善していただきたい点も多々ありますが、何より感じたのは「新しいコミュニケーションとしての可能性」と「荒削りの面白さ」でした。
それでは今回のレポートは、3Dバーチャルセミナーとしては最終回となる12月9日に開催された第3回のセミナー模様をお伝えしていきましょう。

既に前2回のレポートでもご紹介しましたように、一連のセミナーで使われたのは「3Dインターネット」と言われる仕組みです。インターネット上に作り出した立体的な仮想空間に自分のアバターを登場させ、そのアバターを通じて会議やセミナーに参加したり、ネットショッピングなどを楽しむというもので、3Di社のSaaSソリューション「3Diイマーシブセミナー」という技術が使われました。
今回のセミナーのテーマは「3年後のテレビ」。日本も1年半後に地上波デジタルへの全面移行が予定されていますが、そのような中で、とてもタイムリーなテーマだと思いました。前回、前々回と講師は3Diの小池聡社長でしたが、今回は情報通信総合研究所の志村一隆主任研究員が担当されるとのこと。主催者側の説明によると、志村氏は衛星放送の会社に勤務した後、情報通信総合研究所に移り、現在は海外のメディア研究が専門。毎月米国に出張し、メディアの新しい動きを取材されていることから興味深いお話が伺えそうです。
セミナーの出席も3回目ともなるとアバターの操作も手慣れたもので、「着席したい椅子に着席する」という動作がいとも簡単にできるようになっていました。上達に驚きながら画面を見てみると、今回の3Dセミナーの会場はまさに巨大なホール。実際に会場にいたならば、最後列から演壇までの距離が数十メートルあるかと思わせる大きな会場で、資料を映し出す演壇のスクリーンは、アバターの身長から推測すれば縦5メートル、横15メートルほどにもなります。そんな大会場には、私のアバターも含めてすでに40体近くのアバターが着席し、手をあげたり、うなずいたりしています。アバターの動きや仕組みなど、もっと他の点で驚かなければいけないのでしょうが、参加人数によって会場のデザインやレイアウトが簡単に変えられる点は毎回驚きます。
出席予定のアバターがほぼ揃い、志村氏が「(PC画面上で)スライドを見ることができている人は挙手をしてください」と問いかけると、着席していたアバターが一斉に挙手。初回セミナーでも同様な光景を見ましたが、やはり壮観です。資料の閲覧確認を終えたところで、いよいよ講演がスタートしました。
志村氏によると、3年後のテレビを見通すうえで重要になってくるのが「モバイル」「ソーシャル」「クラウド」の3つのキーワード。例えばモバイル分野については、「録画」「モバイルDTV」「プラットフォーム」が大きなカギを握ってくるのではないかとのことでした。あまり聞き慣れないモバイルDTV(携帯向けデジタルTV)というサービスですが、米国では今年の6月に地デジの移行作業が終わっており、モバイルもDTVに移行し始めているそうです。セミナーでは、メディア先進国の米国で提供されている、あるいは提供が予定されているサービスなどが動画で紹介されていました。
PC画面を見ていると、向かって左側の部分に動画が、また右側部分には大ホールの椅子に着席し講演を聴いているアバターたちの姿が、また画面下部分では、参加者たちが講演内容などに関して盛んにチャットでやり取りをしています。
志村氏も、チャットでやり取りされている情報や質問を随時講演内容に盛り込みながら、セミナーを進めていきます。流れの典型例として、(1)講演内容について参加者がチャットで疑問を発する→(2)疑問について講師が講演内で回答→(3)質問者がアバターの挙手などを通じて理解した旨を意思表示する― がありました。文字で表すと複雑な感じがしますが、実際にセミナーに参加していると、この3つがとてもスムーズに流れていきます。
セミナーは、志村氏からさらにソーシャル、クラウドといったサービスが未来のテレビに及ぼす影響などの説明があり、質疑応答を経て終了。終了後、別室のバーチャルルームでは、初回同様、数人の参加者を集めた「グループミーティング」が開かれ、セミナーの感想、システムの使い勝手などについて聞き取りが行われていました。
今回、3D空間で繰り広げられるセミナーを初めて体験してみて感じたことは、自分への戒めも含めて「食わず嫌いは損をする」ということでした。自分の価値観に加え、例えば「3Dインターネットは使いにくい」「必要性はあるのか?」といったさまざまな方面からの伝聞情報を鵜呑みにし、「理解したような気分」になってしまうことの恐ろしさです。
3回のセミナーはおおむねスムーズに進行していましたが、3Dの機能を生かしきれていない場面、アバターの操作性などの課題も出ました。
いずれも関係者をやきもきさせていたようですが、一参加者から言わせていただければ、課題の抽出、参加者の生の声、多人数が参加し、3D空間、チャット、動画といった3つの仕組みを同時に動かした際の挙動などが検証できたことの意義はとても大きいと感じました。同時に、体験してみることで多くの驚き、面白さ、可能性を実感できたセミナーでした。
新しいコミュニケーションの可能性秘めた3Dインターネット。次回、セミナーが開催されるようなことがあれば、今回のセミナー参加者の意見が反映された、さらに手軽で使いやすい仕組みが登場してくることでしょう。その時は、また体験レポートでお届けしていきたいと思います。
執筆者:磯崎恵一(株式会社情報通信総合研究所)
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